夜道を歩く。
影が動く。あっ、セミだ。
土から出てきて、もぞもぞしている。そこは歩行路。
踏み潰されてるのを見るのがいやだ、手を伸ばすともぞもぞ上ってくる。
少し腕をよじ上る。殻に成虫の兆しが透けている。
このセミは何歳だろうか?
木に置くと、ゆっくり上っていった。
今頃、彼は無事鳴いているだろうか?彼もいのち、自分もいのち。
おぉいのちのともがらよ。そのともがらをもてあそぶ事しかできぬ自分よ。
自分の思いから一歩も出ることができない。本当に浅ましいけれども、
このありようをやめることができない。沈みきっている。
われをたのめとよびたもうなり。